自動運転、まず身近になるのはどこ?暮らしへの影響を地域別に解説
自動運転、気になるけど「いつ、どこで使えるようになるの?」
テレビやニュースで自動運転の話を耳にするたび、「私の生活には、いつ、どのように関係してくるのだろう?」と気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
遠い未来の話のようでもあり、もう一部では実用化されているようでもあり、漠然とした疑問をお持ちかもしれません。実は、自動運転の普及は一斉に始まるのではなく、場所や目的によって段階的に進んでいくと考えられています。そして、その進み具合や形は、お住まいの地域によっても少しずつ異なってくる可能性があるのです。
この記事では、自動運転がまずどこから始まり、私たちの暮らしにどう影響してくるのかを、地域による違いも踏まえながら分かりやすくお話しします。
自動運転の「レベル」って何?知っておきたい基本的なこと
自動運転と一口に言っても、その技術レベルはいくつかあります。難しい専門用語は抜きにして、簡単に言うと「どこまで車が自分で運転するか」によって段階が分かれています。
現在、国際的にも使われている基準では、レベル0からレベル5までがあります。
- レベル0〜2: 運転の主体はあくまで人間。システムは運転をサポートする機能(アクセルやブレーキ、ハンドル操作の一部を助けるなど)を持ちます。
- レベル3: 特定の条件下(例えば高速道路の渋滞中など)では、システムが運転を主体的に行います。ドライバーはすぐに運転を代われる状態であれば、運転以外のことをしていても良いとされています。
- レベル4: 特定の限定された場所や条件下であれば、システムが全ての運転を行います。ドライバーは必要なく、システムが緊急時も含めて対応します。
- レベル5: どのような場所や条件でも、システムが全ての運転を行います。ドライバーは全く不要です。
私たちが「自動運転」と聞いてイメージするのは、おそらくレベル4やレベル5のような、「運転席に誰もいないのに車が走っている」という姿に近いでしょう。しかし、このレベル4や5がすぐに全ての場所で実現するわけではありません。
ポイントは、レベルが上がるほど「ドライバーのやることが減る」ということです。特にレベル4以上が、いわゆる「ドライバーが不要な世界」への第一歩と言えます。
普及の第一歩は「限定された場所」から
自動運転技術は、まずは比較的環境がシンプルで、安全性を確認しやすい場所から導入が進んでいます。
例えば、高速道路ではすでにレベル2(車線維持や追従走行の支援)を搭載した車が多く走っていますし、特定の条件下でシステムが運転するレベル3の技術も一部で実用化が始まっています。高速道路は信号がなく、歩行者や自転車の飛び出しもないため、自動運転にとっては比較的運転しやすい環境と言えます。これにより、長距離移動や渋滞時の運転の負担を減らすことが期待されます。
また、一般道の中でも、特定の限定されたエリアでのレベル4の自動運転サービスの実証実験が進んでいます。大学のキャンパス内、工場や物流倉庫の敷地内、テーマパーク、そして一部の過疎地域などです。これらの場所では、決められたルートを比較的ゆっくりとした速度で走行するため、安全性を確保しやすく、無人での移動サービスを実現しやすいのです。
あなたの街ではどうなる?都市部と地方での普及の違い
自動運転の普及の仕方は、都市部と地方で少し異なってくると考えられています。
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都市部の場合: 都市部は交通量が非常に多く、道も複雑で、歩行者や自転車もたくさんいます。このような環境で完全に自動運転(レベル4以上)の車を走らせるのは、技術的にも法規的にも、そして安全面でもまだハードルが高いのが現状です。 そのため、都市部でまず普及が見込まれるのは、個人が所有する車の自動運転機能の向上(高速道路でのレベル2、3など)に加え、「自動運転タクシー」や「自動運転バス」といった、特定のルートやエリアに限定した移動サービスでしょう。駅周辺の特定の区間や、商業施設が集まるエリアなどで、時間帯限定や事前に予約するオンデマンド形式のサービスとして導入される可能性があります。
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地方・過疎地域の場合: 一方、地方や過疎地域では、公共交通機関の運転手不足が進んでいたり、バス路線が廃止されたりするなど、住民の移動手段の確保が大きな課題となっています。特に高齢者の「買い物難民」「通院難民」は深刻な問題です。 このような地域では、都市部に比べて交通量が少ないことや、住民のニーズが明確であることから、比較的早期にレベル4の自動運転サービスが導入される事例が出てきています。決められた集落内や、集落とスーパー、病院などを結ぶルートなどで、無人のシャトルバスやデマンド交通として運行されています。生活に必要な移動を支えるための手段として、自動運転への期待が大きい地域と言えます。
自動運転が暮らしに与える「地域別の」具体的な変化
自動運転の普及が、私たちの日常生活に具体的にどのような変化をもたらす可能性があるか、地域別に見てみましょう。
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都市部にお住まいの場合:
- 夜遅くの帰宅時や、たくさんの荷物を持って駅まで歩くのが大変な時などに、予約すればすぐに迎えに来てくれる自動運転タクシーを利用できるかもしれません。
- 特定の商業エリアで買い物をした際、自動運転配送サービスを利用して、購入した商品を自宅まで届けてもらう、といったサービスも考えられます。(まだ実証実験の段階が多いですが)
- 自家用車で高速道路を利用した長距離移動が、運転の負担が減ることで、より快適で楽になるでしょう。
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地方・過疎地域にお住まいの場合:
- 家の近くまで自動運転バスが迎えに来てくれるようになり、自分で運転できなくなった方でも、買い物や病院、地域の集まりなどへ気軽に出かけられるようになります。
- これまで公共交通が不便だった地域内の移動がスムーズになり、活動範囲が広がる可能性があります。
- 農産物などの運搬や、地域内の配送に自動運転車両が活用され、暮らしの利便性が向上するかもしれません。
普及に向けての課題とこれから
自動運転は私たちの暮らしを便利にする可能性を秘めていますが、完全に普及するにはまだいくつかの課題があります。
技術面では、予測不能な状況(急な飛び出しなど)への対応力や、雨、雪、濃霧といった悪天候の中でも安定して走行できる性能の向上が必要です。また、万が一事故が起きた場合の責任の所在を明確にするための法律や保険のルール作りも進めなければなりません。高精度なデジタル地図や、車と道路、車と車が情報をやり取りするための通信環境といったインフラの整備も重要になります。
そして何より、多くの人が自動運転を「安全で信頼できるものだ」と受け入れられるようになるまでには、丁寧な情報提供と理解促進が必要です。
自動運転は、明日すぐに全ての車が代わるわけではありません。まずは特定の場所や条件下で、限定的なサービスや機能から導入が進んでいくでしょう。
まとめ:自動運転は「段階的」そして「地域に寄り添って」普及していく
自動運転技術は、一斉に社会全体に広がるのではなく、まずは高速道路、そして特定の限定地域やルートから、段階的に普及していくと考えられます。
特にレベル4以上の「ドライバーが不要な自動運転」は、都市部では自動運転タクシーやバスといった新たな移動サービスとして、地方・過疎地域では既存交通の維持や住民の移動手段確保といった生活を支えるサービスとして、それぞれの地域のニーズに寄り添う形で導入が進んでいくでしょう。
あなたの街でも、少しずつ自動運転による変化が訪れるかもしれません。自動運転がもたらす、より安全で快適な未来の暮らしを楽しみに待ちましょう。